日本における都市縁辺部での開発圧力の実態面の研究では、第1に全体として平面的な開発圧力は減少しているものの、特に住宅地需要は、例えば埼玉県において東京都心に近い利便性のある地域で100mを越える、多層階のマンション開発として顕在化している。第2に、その一方で商業地開発は広域化し、制度面での規制緩和もあって歯止めがかかっていないことが明確となった。 イギリスでの開発圧力の特徴の第1は、住宅地需要の旺盛さである。とくに南東部での知識集約型産業の発展が著しく、南東部での住宅地需要が顕著に増大していた。政府はロンドン東部、そしてケンブリッジ市に連なる回廊、ミルトンキーンズからミッドランドに続く地域を「開発地域」と指定して、計画的な住宅地開発を進めようとしている。第2の特徴として、住宅地需要は田園地域にも深く及んでいる。第3に、商業地需要については日本のような拡散的傾向は抑制されていた。タウンとタウン、タウンと田園地域との無原則な融合を許さず、都市内交通手段の改善を含め都市再生を進めている結果と考えられた。 制度面では日英両国において、第1に、都市農村計画・土地利用計画権限の分権化がほぼ同時に問題にされていることが明らかになった。日本では県あるいは市町村に都市計画区域内の区域区分の権限が委譲される等の制度改正が行われており、イギリスにおいても県にあたるカウンティよりも、より現場に近い市町村にあたるディストリクトの権限が強化されてきている。第2に、イギリスでは自治体の裁量性が伝統的に重要であったが、両国においてともにマスター・プランが重視されてきていることも明確になった。特にイギリスにおいてはgrowth areasなどを明確にし、計画に基づく開発を一定の規範の下でダイナミックな土地利用転換・再開発に進行させ、開発促進的な制度運用をしている。
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