中山間地域の一部では、農村集落それ自体の消滅が進行しはじめている。本研究では、こうした集落消滅に至る直前の状態と言える「限界集落」の実態把握とそれへの対策を含む政策科学的な分析を試みることを課題としている。 本年度は次の3点を中心に研究を進め、いくつかの成果を得た。第1に、前年度の分析により析出した限界集落の統計的な妥当性を検証するために、統計データと各種調査結果(集落の中山間地域等直接支払制度への取組等)とのすりあわせを行った。その結果、限界集落の統計による析出に妥当性があることが確認された。また、このようにして統計的基準を設定した限界集落を、県別に集落地図データシステムに展開し、その地理的分布状況の視認を試みた。それにより、限界集落が、いくつかの県では、特定の地域にまとまって発生していることが確認できた。 第2に、限界集落およびその周辺の住民生活・産業の展開過程や現状を把握するために、集落代表者や集落内農家を対象とする、詳細な実態調査を行った。また特に、ひとつの地域では、地域内の全住民を対象とするアンケートを行い、性別・年齢等の属性別の行動や意識にかかわる分析を進めている。それにより、限界化が進む集落の動態過程、そこで発生している問題点や住民意識等を明らかにしつつある。 また、第3に、来年度の研究の予備的調査として、限界化が進む集落に対して、広域的集落再編等の意識的対応をおこないつつある地方自治体(市町村、県)に対するヒヤリングを行い、その対策に至る行政サイドの問題意識や取組の概要把握を行った。
|