農業・農村政策の分野では、農業集落が政策的な焦点となり始めている。特に、中山間地域をめぐっては、中山間地域等直接支払制度で導入されている集落協定をはじめ、その傾向が顕著である。しかし、それにもかかわらず、集落を対象とした研究は立ち後れている。集落がどのような性格を持ち、それがどのような変化を遂げているかを明らかにした研究は極めて少ない。本研究では、中山間地域の集落の動態と現状を把握したうえで、特に限界化が進んだ集落が形成される過程、実態、政策的インプリケーションの析出をおこなった。 得られた結論は、以下の通りである。 1.中山間地域では、「人・土地・ムラの3つの空洞化」が進行していることが統計により確認された。特に最近では、集落が消滅する傾向が新たに発生している。 2.集落の動きを既定しているのが、集落内の人口である。特に、30〜64歳(「壮年人口」と呼ぶ)の人口数が、集落の活力の程度と強く関連している。人口の都市への流出の結果、集落内の壮年人口が著しく少なくなった集落では、特に農業生産に関連する活動が停滞するという問題が発生している。 3.つまり、中山間地域の限界集落対策としては、壮年人口の少ない小規模集落をターゲットとすることが必要である。また、そうした限界集落をめぐっては広域的な対応策の必要性が主張されているが、現実にはそこでは集落機能の代替ではなく、広域単位で集落単位では対応できない機能の分担が行われており、限界集落の機能がそれにより代替されるものではない。その点で、小規模集落を生み出さない政策が重要となる。
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