本研究は、米国と北東アジアにおける飼料穀物について、アグリビジネスの視点からその安定的な需給構造のあり方を展望しようとするものである。平成14年度は、日本、及び、中国の需要構造と流通システムについて現地調査を行った。前者では、農林水産省、飼料輸出入協議会、畜産会社等を調査し、日本の飼料穀物輸入の特徴を把握した。日本では1970年代に比べ輸入量が3倍になったにもかかわらず、円高によって実質的な支払額はほぼ同じですんだこと、80年代後半以降は、その同じ円高によって畜産業の空洞化が始まったこと等により、輸入量は停滞局面に入っていることが明らかとなった。また、輸入調達先は、米国一極集中型で推移してきた。中国からの輸入を試みる畜産会社もあるが、全体としては品質問題等から米国へ依存せざるをえない状況があることも明らかとなった。後者では、中国の大消費地である広東省について、日本、米国、韓国、中国の国際調査チームを編成し現地調査を行った。広東省には、中国最大の養鶏関連企業も存在している。広東省の飼料穀物は、主に中国東北地方から移入している。その流通ルートが大連からの船便によること、大連FOB価格が存在すること、大連からの輸送コスト等を把握した。また、昨年度は、中国の飼料穀物価格が、国際価格よりも低かったので輸入は極めて少なかったが、今後は、価格水準次第では、米国からの輸入が増える可能性が大いにあることも把握しえた。
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