本研究は、米国と北東アジアにおける飼料穀物について、アグリビジネスの視点からその安定的な需給構造のあり方を展望しようとするものである。平成16年度は、国際シンポジウムでの報告及び情報交換、中国の穀物輸出企業や大連穀物取引所等の聞き取り調査、さらに国内での穀物流通関係の資料収集を行った。国際シンポジウムは、富山大学、吉林農業大学、韓国農村経済研究院の3機関による企画のもとに吉林農業大学にて開催した。本シンポジウムでは、穀物流通企業と生産農場の関係について報告し、中国、韓国の研究者と穀物流通事情についての情報交換を行った。また、調査対象の穀物輸出企業は、株式の20%は国有、80%は私有の企業である。そこでは2004年の取扱量が激減したことなどの動向、並びに、穀物の調達及び輸出ルートを把握した。吉林省内のトウモロコシ輸出企業は、当社ともう一社しかないが、両社は集荷面で競争関係にあることも明らかになった。さらに、大連市にある穀物取引所では、近年、トウモロコシの先物取引を再開した。中国のWTO加盟により、中国の農産物流通の自由化が加速しているが、飼料穀物についても市場機構の整備、集荷・流通段階での競争構造の形成など、基本的には市場に反応する流通、生産体制が構築されつつあることを確認した。ただし、貿易量の変動にみられるように供給量は極めて不安定であり、経済成長にともなう肉消費の増大に対応して、今後は穀物輸入依存度を高める可能性がある。本研究は、飼料穀物をめぐる穀物流通企業の経営行動を通じて、北東アジアの需要と米国の供給関係の将来を見通すことに貢献したといえる。
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