研究概要 |
本研究は、米国と北東アジアにおける飼料穀物について、供給及び需要主体としてのアグリビジネスの経営行動に焦点をあて,その安定的な需給構造のあり方を展望したものである。中国の自給率の動向は、北東アジアのみならず世界の需給関係に影響を及ぼす。自給率は、内外価格差、国内価格水準、国内の需給関係等と関連し、国内の需給関係は、供給と需要の動向及び農業政策に左右される。国内では、WTO加盟に対応し、国際競争力を高めるべく、農産物国内流通の市場機構を整備し、集荷・流通段階の競争構造が急速に形成されつつある。中国の消費地である南部の飼料穀物は、大連を経由して主に中国東北地方から移入している。しかし、消費地におけるアグリビジネスは、極めて市場対応的に行動しており、内外価格差次第では、調達先を海外へとシフトし輸入が増える可能性は十分ある。米国では、アグリビジネスの寡占化・多国籍化が進み、価格高騰時に大量の穀物を輸入するなどで国内市場価格を調整している。その結果、米国の生産農場の面積規模は大きいが、農業者の所得水準は決して高いものではなく、中堅的な家族経営階層が激減しつつある。中国でも、今後のアグリビジネスの成長によって、同様の事態が想定される。中国が、国内価格の調整のために、海外市場を活用するようになると、輸入依存の日本や韓国への影響は大きい。その場合、中国の飼料穀物生産艇家や日本や韓国の畜産農家にどのような影響を与えるのか、今後、さらに注日していく必要がある。農業構造の不安定化は、自給率の低下につながるのである。
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