本研究は、農業用廃プラスチックの適正処理に関わり、(1)取り組み主体形成と活動、(2)排出・回収システム、(3)処理施設の管理運営、(4)事業者(農家)の費用負担、(5)再生品市場・静脈産業の5つを主な課題として、社会経済的視点から調査・解析し、社会的に解決を迫られている「廃プラ適正処理の仕組み」の定着・拡大の方途を提示することを課題とする。 本年度の調査結果として、(1)取り組み主体形成と活動に関わり、都道府県レベル、ブロックレベル、市町村レベルの適正処理協議会が課題、取り組み方法、地域連携等の関わる合意形成の組織として有効であることが判明、遅れた県では行政監査等を契機に協議会を組織化することにより、取り組みの機動化が図られている。(2)排出・回収システムについて注目されるのは、行政、農協、商業会に加え、生産部会代表を組織構成メンバーとし、排出事業者の自覚を促す取り組みが回収率を引き上げ品質を向上させる上で大きな役割を果たしていることである。(3)処理施設の管理運営では、再生品の品質向上に処理費用、したがって農家負担の増嚆が相関するため、再生品市場を明確に見定めた対応が重要であること、(4)農家負担は都道府県単位で処理業者との調整が図られているものの、処理方法の相違もあって大小の差は著しいこと、同時に従来自治体の負担が多かったが排出事業者負担が一般化し、負担率も拡大する傾向にある。(5)処理施設は、排出量が全体的に減少する傾向にある中、操業率維持のため回収処理量の確保を必要としており、広域収集体制を模索している。自県内に処理施設のない都道府県は自県主義を排し、地域連携により適正処理を図ることが投資コスト削減となり、処理施設の円滑運営にも役立つことが明らかになった。
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