研究課題
基盤研究(C)
本研究では、メクレンブルク・フォアポンメルン州を対象地域として、戦後の東ドイツにおける農業集団化過程の全体像を、村落構造の変化との関わりで実証的に明らかにすることを目的としている。とくに新農民村落と旧農民村落という村落形態の違い、戦後東方難民問題のあり方、厩舎や住宅などの物的資源などに着目しつつ、村落レベルに即したミクロ史分析を試みた。本研究の最大の成果は、1950年代のバードドベラン郡に属する28のLPGに関する文書の解読を通して、当該期の集団化の多様性が、さらに村落形態による違いが明らかになったことである。第一に新農民村落については、土地改革の結果、経営放棄問題や村落の機能不全などの危機的状態が生じることとなった。集団化はこうしたカオス的状況に対して、「上位権力」の誘導・動員を利用しながら打開策を模索しようとしたものであった。ただし、同じく新農民集落といっても、村内の少数派グループにより村内経営資源を確保することを意図しながら、「6月事件」によって結果的に解散にいたる村落と、他方で、当初より全村型でLPGを立ち上げ、重点建設投資を享受すること等で良好発展の道をたどる村落がみられた。第二に旧農民集落の場合、戦後の大量難民の流入のみならず、1952年代の反大農政策による大農解体が村落に対して決定的な作用を与えた。とくに集中的に分析したH村の事例では、大農経営の豊かな経済資源(ときには住居)をてこに、難民新農民層によりLPGが設立されている。こうした新たな受益層がLPGを核に形成されたうえで、1955年、OLBの引き受けと村外テクノクラートの登場によるLPGの急拡大が生じることで、旧農民村落におけるLPGへの資源集中と政治的掌握が一気に進捗した。村に残存した大農家族たちも、婚姻、LPG加盟、MTS雇用などにより、こうした過程に適応していったのである。
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歴史と経済(旧土地制度史学) (第188号以降掲載予定)(印刷中)
REKISHI TO KEIZAI (The Journal of Political Economy and Economic History) Vol.188(decided to be published after)
社会科学(同志社大学人文化学研究所編) 72号
ページ: 173-198
生物資源経済研究(京都大学) 第10号
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The Social Sciences (eds. by Institute for the Study of Humanities & Social Sciences)(Doshisha University) Vol.72
The Natural Resource Economics Review (eds by Natural Resource Economics Division)(Graduate School of Agriculture, Kyoto University) Vol.10
生物資源経済研究(京都大学) 第6号
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The Natural Resource Economics Review(Kyoto University) No.8