アセアンの城内貿易自由化協定実施下における後発国の農業開発戦略を検討するには、何よりもまず、先発の周辺国(タイ、インドネシア、フィリピンなど)における農業政策の動向と主要農産物の国際競争力を把握し、後発国農業との競合性を検討しておかねばならない。 このため、本年度は、タイ、インドネシア、フィリピンにおける農業政策の変化と主要農産物の国際競争力について、DRC指標を用いて分析を行った。その結果、a)主食であるコメについて、輸入国であるフィリピンやインドネシアでは、自由化圧力の中で、依然として国内稲作農業を保護する政策が維持されていること、および、b)為替レートを適正な水準に修正したうえでコメの国際競争力を比較すると、3ヶ国とも国際競争力を維持しているものの、経済発展による労賃コストの上昇によって競争力は低下する傾向にあることが明らかとなった。 一方、後発のラオス、カンボジア、ミャンマー3ヶ国については、ラオスにおける農業発展についてのこれまでの調査研究にもとづき、同国における農業発展の方向は、急進的な近代化路線より、在来技術を改良してゆく漸進的な発展の方向を模索すべきであるという政策提言を行った。 さらに、後発国における農産物の国際競争力と先発国のそれを比較するためには、DRCを推計する必要があり、そのためには、為替レート、各作物の面積当たり生産量、投入要素の価格、生産費、輸出入関税率、輸出入額、物価上昇率、国民所得統計などの統計資料が必要である。今年度は、主にカンボジアについて、DRC推計に必要な資料の収集を行った。また、タイの高品質米と競合関係にあるカンボジア、ラオスの高品質米の国際競争力を推計するため、稲作農家を対象にした生産費調査を実施した。その結果、カンボジア、ラオスともに、高品質米については、競争力を持つことが明らかとなった。
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