FTAなどの地域経済統合の動きが加速化するなかで、東南アジア移行経済国も、潜在的に国際競争力のある農産物を発掘し、それらを育成してゆくことが急務となっている。 本年度は、中国本土、シンガポール、香港、オーストラリア、ニュージーランドなどで需要が増加し、ラオス、カンボジアにおいて輸出農産物としての発展が期待されている芳香米(タイではジャスミン・ライスと呼ばれる)の国際競争力および発展戦略についての調査・研究を行った。 これらの国々においては、国際競争力の指標となる生産費についての公式統計が存在しないので、農家聞き取り方式によってこれらの情報を収集した。農家聞き取り調査は、芳香米の産地である、カンボジア・バッタンバン州、ラオス・サバナケット県において実施され、合計150戸の農家から、生産費、農地経営、就業構造、所得などについて情報を得ることができた。 この調査の結果、(1)両地域ともすでに、主要な競争相手であるタイ国向けに非公式ルートでの輸出が行われており、この実態自体、カンボジア産、ラオス産芳香米がすでに競争力を有していることを示していること、(2)これらの地域では、精米所、倉庫などポスト・ハーベストの施設が未整備であるため、タイへは、主として籾で輸出されていること、(3)輸出するためには品質管理が不可欠であるが、カンボジアやラオスの精米業者・卸売業者の大半は、このよう品質管理のためのノウハウをもたず、輸出による利益を国内に留保するには流通業者の競争力をも高める必要があること、(4)DRCで計った競争力では、タイ産芳香米よりも競争力が高いこと、(5)現在、カンボジア、ラオス両国とも農産物の国境貿易を政府が制限しているが、こうした国境措置が、警官や税関職員による汚職を誘発し、芳香米輸出の拡大を阻害する一因になっていること、などの事実が明らかとなった。
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