平成15年度はオーストラリアの穀物輸出システムと国家貿易企業の最新の動向分析を行なった。オーストラリアの農業構造、農産物市場に関する文献や統計資料を収集・分析するとともに、2004年1月に現地調査を実施して民営化後のAWB(オーストラリア小麦庁)の改革動向とその影響について子細に検討した。そこから得られた研究結果のあらましは以下のとおりである。 1.オーストラリアの穀物輸出システムを分析するにあたっては穀物の集荷・保管・物流の側面と、穀物販売の側面との区別と関連が重要である。 2.1999年にAWBが民営化され、持株会社AWB LimitedのもとにAWB International(全国プールの運営、穀物輸出)、AWB Australia(穀物の国内販売)、AWB Finance(農家への融資と資金調達)、AWB GrainFlow(穀物の集荷・保管)などの子会社をおいた。AWBは、穀物の集荷・物流業務への進出や、Landmark社(農業資材販売)の買収に見られるように、総合的なアグリビジネス企業への展開を図ろうとしている。 3.AWBが全国プールを運営することで、穀物の品質改善、顧客への安定供給、価格変動リスクの緩和を図るという点では民営化以前と大きな違いはない(代金支払い方式における選択肢が拡大した)。また、小麦の輸出独占(シングルデスク)を担う国家貿易企業としての立場も引き続き維持している。 4.AWBのシングルデスクについては2004年7月までに政府機関のWEA(小麦輸出機構)がレビューを実施する予定であるが、大方はシングルデスクが引き続き維持されるであろうと見ている。 5.オーストラリアの穀物集荷・販売システムは州による違いが大きい。したがって、連邦の農業政策だけではなく、各州レベルでの政策と実態の分析が必要である。
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