研究概要 |
新しい食料・農業・農村基本法では耕作放棄地の活用についての対策が希求されている一方,都市住民を中心とした市民農園等に対する要望は現在も非常に強い。今後耕作放棄地等の遊休農地の積極的な利活用を図る際に,農園という選択肢は時宜に適つた方法と考えられることから,本研究では遊休農地を農園として長期的に利活用する際に整備すべき条件を明らかにすることを目的としている。 本年度,研究代表者の九鬼は全国の遊休農地活用事例データベースの更新を行った。研究準備段階でのデータベースは2000年7月までだったが,これを2002年12月末までに更新し,全部で733件の事例を収集した。その結果遊休農地の活用内容としては農園利用が最も多く,農園に利用されている遊休農地の特徴として基盤整備が既に行われていること,農園は市町村が主体的に運営していること,一方で運営側の過剰負担が問題点として挙げられ,これが利用の持続性を左右すること等が明らかになった。 研究分担者の三宅は,農地の活用形態の中で学校農園をとりあげた。農地の持つ多面的機能の一つとして教育的機能が注目されており,今後その重要性はますます高まるものと考えられる。特に,学習指導要領の改訂による実体験を重視した教育への流れから,その勢いに拍車がかかっている。そこで兵庫県内の小学校856校を対象としてアンケート調査を実施し,学校農園の実施内容と学外の農地の利用状況を明らかにした。その結果,学校農園を実施している小学校は約7割,学外の農地を利用したものは約4割であること,農地の箇所数は,ほとんどが1箇所であり,100〜500m^2の範囲が最も多いこと,農地の所有は「地元農家」が85%で圧倒的に多いこと,農地確保のルートとしては,行政,農家,教員など様々な方法に分散していること,学外の農地の利用希望は少なからず見られるが,農地の確保が困難であること等が明らかとなった。
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