研究概要 |
岡山県吉井側上流部の黒木ダム流域を対象に,局所線形近似法を用いた実時間洪水予測法について,検討を加えた。 まず,局所線形近似法による洪水予測の際に必要となる最近隣ベクトルの探索に,現時点の特徴ベクトルからのユークリッド距離が小さい特徴ベクトルから順に一定個数(k個)を用いるk-NNアルゴリズムに替えて,現時点の特徴ベクトルから一定のユークリッド距離内にある特徴ベクトルすべてを用いて予測計算を行うr-NNアルゴリズムを用いた。このr-NNアルゴリズムは,非線形性の強い高水部での予測には少数個の特徴ベクトルを用い,線形性の強い低水部の予測には多数の特徴ベクトルを使うことを期待して用いたが,従来のk-NN法に比べて予測精度はあまり変わらず,むしろ悪化する場合も少なくなかった。r-NNアルゴリズムの適用条件についてはさらに検討する必要がありそうである。 また,SOLO法(Self-Orgamzing feature map with Linear Output Mappmg)を用いて,黒木ダム流域におけるダム流入量の実時間予測を行った。SOLO法はニューラルネットワーク型のアルゴリズムであるが,一般的なニューラルネットに比べ短時間でモデルが同定できる利点がある。SOLO法を用いて1〜3時間先の流入量予測を行った結果,局所線形近似法やタンクモデルにカルマンフィルターを併用した予測法と同等の予測精度が得られたが,予測流量が突発的に減少あるいは増加する場合があり,実用のためには適用条件についてさらに検討を加える必要があることが分かった。
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