研究概要 |
化学肥料には,土壌を分散させ,微細土粒子の沈降を抑制する作用があることを明らかにした.化学肥料が土壌の分散に及ぼす影響は,基準施肥量より3倍で強く認められた.化学肥料が土壌の分散に及ぼす影響は施用量や土壌の科学性と鉱物性の差異により異なり,特に,リン安の施用では粒径1.5μm前後の分散に強い影響を及ぼすことが示唆された. 化学肥料の沈降抑制は,分散作用による微細土粒子の生産にも起因するが土粒子の荷電に及ぼす影響も大きい.濁水中における微細土粒子の分散,凝集現象はDLVO理論で説明される.すなわち,分散は電気二重層による粒子間反力がファンデルワールス引力に卓越する場合に起こり,凝集は土粒子間引力が反力より大きいことにより起こる.したがって,高濁水濃度ほど沈降が早いのは濃度増加に伴うpH低下(赤土は酸性土壌)によって土粒子表面のマイナスイオンがH+で中和され電気二重層の反力が減少することと土粒子密度の増加で粒子間距離が接近しファンデルワース引力が増大するためである.しかし,化学肥料の存在は濁水のpHを上昇させるため電気二重層の反力を強める結果をもたらし凝集を抑制する方向に作用する. 任意経過時間における化学肥料添加濁水と無添加濁水の粒径分布を調べると無添加では10ミクロン以上の粒径はすべて沈降するが添加試料では,なお60%が浮遊状態にある.このような現象は現地沈砂池でも確認された.たとえば,24時間後の沈砂池の深さ別(水面,0.5m,1.0m,1.5m)の濃度はそれぞれ474,495,512,502mg/Lであり,粒径分布にもほとんど差はみられない.化学肥料の影響を強く受けていることがわかる.浮遊土砂流出モデルの構築に関しては,モデルのファクターとして,化学肥料の影響度を調査している.
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