研究概要 |
農業用水路・溜池において生態系とその環境条件について調査した.農業用水路は石川県の手取川七ケ用水と河北潟周辺部で,溜池の調査は,滋賀県水口町および大津市で行った.これらの調査結果から新たに得られた知見は以下のとおりである. 1.七ケ用水では,水深と流速の多様性と底生生物の多様性には正の相関があった.また,水深,流速および生物の多様性はコンクリート水路,土水路,親水水路の順に大きくなる傾向が明らかになった. 2.七ケ用水で得られた底生生物の採集リストを基づいて,生物学的水質判定を行ったところ,ほとんどの調査地点ではβ-中腐水性(少しきたない水)と評価された.それに対して一般水質試験では,特に大きな問題は見受けられなかった. 3.水生植物調査の結果から,七ケ用水にはいわゆる「藻場」が中・下流部に存在することが判明した.この「藻場」が,生態系の多様性に影響を与えている可能性があり,今後詳細な調査が必要であると考えれる. 4.河北潟の調査では,ニホンメダカの生息場所は,主として常時水域である潟の背水域であることが判った.また,メダカの活動期である6〜8月には,メダカは一時水域である農業用水路上流へ遡上することが判った. 5.大津市と水口町の溜池の生態調査の結果,多くの溜池は他の水域から孤立しており,比較的単調な生態系を構築していること,都市部にある溜池は外来魚などの無断放流が見られ,溜池本来の生態系が崩れていることが明らかとなった. 6.大津市と水口町の水質,プランクトンおよび周辺環境調査の結果,溜池水質と植物プランクトンの優先種は溜池の形状,集水域と相関性があることが明らかとなった.
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