研究概要 |
本研究はロボットと人間が協調して作業を行うテレロボティクスの開発を最終目標としており,最終年度である今年度は,これまでに抽出された問題点の改良を行い,温室内で総合的な実験を行った。 収穫ロボットのマニピュレータに関しては,トマトの栽培様式を考慮し,5自由度の垂直多関節型と前後および上下の2自由度直動関節を組み合わせ,計7自由度とした。これは上下に存在するトマト果実を無理のない姿勢で収穫するためである。収穫用エンドエフェクタは吸着パッドと4本のフレキシブルなフィンガを有する多指型とした。前後方向にスライドする吸着パッドによって,目的の果実だけを果房から分離し,フィンガで果実を包み込むように把持する。このエンドエフェクタはハサミを用いる代わりに,離層の部分から果実をもぎ取って収穫する。また,後述する問題点を克服するため,マニピュレータの下部にカラーカメラを設置した。 温室での実験ではまず,情報収集ロボットによってトマトの3次元距離情報とカラー画像を取得し,その情報を無線LANを介してサーバに転送する。サーバでは各果実の識別や座標の検出が行われ,結果が保存される。遠隔のクライアントは任意の時間にサーバにアクセスし,サーバが判断した結果をチェックする。その判断にミスがあったり,収穫果実の追加などがあれば,ディスプレイ上で修正を行う。サーバでは再計算が行われ,収穫ロボットに収穫対象果実の3次元座標が送信される。これまでの実験の結果,同一果房内で最初に収穫対象となった果実の収穫成功率はほぼ100%であったが,2番目以降の果実においては,果房の位置がずれた場合などにおいては,収穫できない場合があり,全体としての収穫成功率は約60%であった。 そこで,今年度の実験においては,収穫ロボットにも簡易型のカラーカメラを装着し,同時にカラー画像と3次元距離情報から果実を識別するアルゴリズムの改良を行った。果実収穫を行う毎にカメラで画像入力を行い,情報収集ロボットからの情報を補正しながら収穫動作を行う方法である。得られたカラー画像を二値化して各果実の円形度を求め,その値が大きな果実ほど周囲に障害物が少なく,最も手前にある果実と判断し,収穫の順番を決定する。温室において約90個の果実を対象に実験を行った結果,収穫成功率は90%以上になり,本ロボットシステムの有効性が確認された。
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