研究概要 |
本研究は,冬季の温暖化による影響が顕著に発現しやすいニホンナシを対象に行った。 1.冬季の温暖化に伴う花芽異常の発生限界条件の解明 (1)ブラジルでの花芽異常発生に関する現地調査 海外共同研究者との調査・解析結果の検討から,花芽(混合花芽)中のCaやBについて,地域間,品種間,採取時期,芽の部位別などの含量の相違と花芽異常の発生に興味ある成果が得られた。調査対象品種は,Pyrus pyrifolia(二十世紀,幸水)とP.communisとP.pyrifoliaの雑種(Kieffer)である。花芽異常の発生にはB欠乏ではなく,B過剰とCa欠乏の関与が示唆された。 (2)花芽異常の再現試験 露地で7.2℃以下の低温遭遇時問が800時間に到達した後,1月初旬に27/22℃のファイトトロンに搬入し,温度変動を与えると'幸水'よりも自発休眠覚醒のための低温要求量が高い'新高'では,1花房に1輪程度の貧弱な開花が多少みられるようなブラジル国での軽度の花芽異常発生状態を再現できた。 (3)開花その他の生態情報データベースの構築 生態情報データベースの構築に向けて,資料を収集解析中である。青梨の'二十世紀'と赤梨の'幸水'・'豊水'についての開花や収穫日の変動状況の比較解析を行い,国内の関連学会に発表するともに,さらに関連成果を国際シンポジウム(2件)で講演予定である。 2.冬季の低温量不足に対応した制御技術の開発 自発休眠期と他発休眠期の2回に分けて,水の気化熱を利用した細霧冷房法と高反射性資材の組み合わせにより,積極的に樹体温の低減を図る試験を行った。外気温が15℃と自発休眠覚醒に無効な温度帯にあるときでも,処理区では4〜6℃の冷却効果があり,自発休眠覚醒に有効であった。そのような昼間の温度低減処理を行うことにより,無処理地区に比較し,ファイトトロン搬入後の発芽・開花率が向上した。
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