水素/二酸化炭素混合ガスを基質とするバイオガス変換システムは、温室効果ガスである二酸化炭素固定の利点からその実用化が望まれているが、これに関する有用な知見は未だ十分でない。本研究ではガス基質利用型発酵槽の加温特性やプロセス安定化特性に関する実験的研究から、二酸化炭素固定型バイオガス変換システムの設計や開発に有効な基礎データを得ることを目的とした。 ガス基質を供給する経済的なバイオガス変換システムを開発するため、旋回軸と回転棒から成る回転型ガス分散システムを有する工場規模の発酵槽を試作した。熱交換は回転棒からの高温バイオガスと発酵槽スラリー間の直接的接触により行われる。廃スラリーとバイオガスの代わりに本研究では水と空気を用いて、システムにおける回転や加温の特性をエネルギや物質収支の分析から考察した。ガスバッグによる閉鎖系発酵槽において、水温は次第に上昇し、加温モデルにより計算された温度上昇は、実際の温度上昇と一致した。 回転ドラム型発酵システム(RDFS)において、バイオガス発酵槽からの流出液が酸発酵槽の安定性に及ぼす影響を評価した。おからを基質として用い、2つの構成のカスケードプロセスについて実験を行った。見かけの一次反応速度定数は、pH4.6〜5.1のカスケード1で15.8×10^<-3>/d、pH5.2のカスケード2で14.7×10^<-3>/dであった。見かけのVS分解率は21.1〜25.5%、総VA(酢酸)は14.5〜18.6g/Lであった。電離有機酸はカスケード1、2ともに増加したが、酢酸の占める割合は減少し、一方でプロピオン酸や酪酸の割合が増加した。バイオガス発酵槽の流出液の添加は両プロセスの酸発酵を安定させたが、加水分解における高濃度の有機酸がカスケード2における加水分解に悪影響を与え、その結果、見かけの加水分解速度はカスケード1より僅かに小さかった。
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