植物生産現場で発生する生産過程に関する情報を効果的に収集・表現・公開する方法について検討した。この目的で、商取引に関する情報を標準的な書式に統一して、企業間で電子的に交換するEDIの手法を取り入れた。ここでは、生産過程の情報について記録した集合体を植物生産過程オブジェクトと呼び、収集や利用を効率的に行える植物生産過程オブジェクトの形式を検討した。この目的で、数箇所のトマト生産温室・バラ生産温室から収集された環境データおよび生産記録データを用いて、その特徴を検討した。実験温室にネットワークカメラを設置し、トマト・ホウレンソウの養液栽培を行って、その過程を画像に記録し、動画として観察したり、ステレオ画像として立体計測したりして、検討を行った。検討の結果、例えば、生産温室においての日生産量は、植物の収穫可能量と大きく隔たっているので、植物生理的な面に関するデータだけをオブジェクト化するだけでなく、人為的・社会的要因に関するデータもオブジェクト化しなければならないことなどが明らかになった。これらの検討を踏まえて、植物生産過程オブジェクト化すべき植物生産過程の情報を整理すると、(1)環境情報、(2)生産管理情報、(3)生産植物情報に大きく区分できた。これらの情報は、XML形式で、しかも、栽培開始日から時系列的に記録する方法が望ましいと結論できた。XMLで記述された植物生産過程オブジェクトは、SOAPなどのWebサービスを用いてネットワークを通じて簡単に交換でき、自律分散型環境計測制御システムとも親和性が高く、また、テキスト形式のファイルであるので、ICチップに記憶させることなども容易にできる特徴が認められた。今後は、検討した形式に従った植物生産過程オブジェクトを扱うことのできるソフトウェアツールを試作し、より実用性の高い植物生産過程オブジェクトにするための評価・改良を行う。
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