コラーゲンおよびコラーゲン分解物を摂取することによる生理機能は不明な点が多いが、その骨や皮膚への効果が報告されていることから健康補助食品として認知されている。そこで本研究では、食品として摂取されたコラーゲンが、胃および小腸で消化され、腸管から吸収、血中へ移行する代謝過程を追跡し、骨形成への影響について検討する事で、コラーゲンの新たな機能を解明する。 本年度の研究では、動物モデルに対するコラーゲン投与の影響について検討した。まず、骨粗鬆症モデル、自然発症型関節症モデルおよび皮膚萎縮モデルへのコラーゲン投与の効果について検討した。コラーゲンを給餌することにより、骨粗鬆症においては骨密度の改善および骨中のコラーゲン量の増加を認めた。関節症においては、膝関節部の軟骨損傷の改善効果が認められた。関節液中の遊離ヒドロキシプロリン量が増加し、骨端中のプロテオグリカンの増加を認めた。これらの成果の一部を食品加工技術に報告している。皮膚萎縮モデルは、I型糖尿病を誘導することで皮膚の萎縮を引き起こす。コラーゲン投与により若干真皮の厚みが増した。コラーゲン摂取は骨だけでなく、皮膚にも何らかの効果を示すものと思われる。また、コラーゲン代謝の研究のため、コラーゲン投与後のラットから経時的に採血し、血中の遊離アミノ酸の推移を測定した。その結果、コラーゲン量は、投与30分をピークとして6時間後には一定の値を示した。新たなコラーゲン資源探索のため、サメの各種臓器からコラーゲンの抽出を行った。コラーゲン特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンは、皮膚や軟骨以外に眼球や腸に認められた。また、筋肉中には抗コラーゲン抗体に反応する物質の存在を認めた。
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