研究課題
食品をかむことが困難な人にはトロミをつけた食事の工夫は非常に効果的である。古くからコラーゲンは食品のゲル化剤として利用されているが、加熱によりゲルが溶解するため用途が限定されている。そこでまず、コラーゲンの融点を改変し、加熱しても適度なトロミを有するゼラチンゲルを調製する。次に、本来高い栄養価を有している乳タンパク質、食肉タンパク質やそれら由来の生理活性機能を有する成分も会合させ、機能性タンパク質ポリマーを調製する。さらに、融点を高めたゼラチンゲルと機能性タンパク質ポリマーを組み合わせることにより、加熱しても適度なトロミがついて、高齢者の方でも咀嚼嚥下が容易で、生体調節機能をも有する、食品タンパク質ポリマーの研究・開発を試みることが本研究の目的である。コラーゲンの物性の改変や食品タンパク質ポリマーの調製には、タンパク質のグルタミン残基とリジン残基間を共有結合により架橋する反応を触媒する酵素、トランスグルタミナーゼ(TG)を使用した。コラーゲンの融点の改変を試みた結果、様々な融点を有するコラーゲンゲルが調製できた。さらに、TGにより大豆タンパク質や乳タンパク質を処理することにより乳化性の向上した食品素材も調製できた。一方、豚肉の骨格筋を構成する筋肉タンパク質や骨由来成分を酵素処理し、血圧降下作用を有するペプチドが出現することを明らかにした。さらに、それらのペプチドを単離・精製したところ、筋肉タンパク質のミオシン重鎖由来の6mer、ミオシン軽鎖由来の8mer、トロポニンC由来の9merおよびトロポニンT由来の7merのペプチドを同定し、強い血圧降下作用を有することを明らかにした。さらに骨のコラーゲン由来の7merや11mer、IgG由来の4merなどいずれも新規なACE阻害ペプチドを同定した。以上の結果、食品の物性をコントロールし、咀嚼嚥下性改善効果も持ち、上記の機能性ペプチド等を取り込んだ、生体調節機能も有する食品タンパク質ポリマー開発の可能性が示唆された。
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