槐島らによって考案された摘採機を用いれば、手で穂をしごいて種子を採種する従来の方法と同様の品質でありながら効率的に採種が可能であると期待される。この技術を応用して試作された「採種機」は、初期型では手摘みと大差ない効率であったが、改良型では高品質な野草種子を手摘みの約10〜30倍の効率で収穫することが可能であった。このことは野草の採種コストを大幅に低減可能となる重要な成果である。しかしながら、吸引口を野草の穂や花茎まで持ち上げる必要があるなど、作業性に難があることが判明したため、実用化に当たってはその点についての改良が必要であると考えられた。また、様々な野草種子について採種を行った結果、重力散布種子だけでなく、ススキやチガヤなどの毛を有する風散布種子でも採種効率が高いことや、採種された種子の発芽率は手摘みと遜色ないことも明らかとなった。さらに、有用野草のチガヤでは、系統によっては、種子休眠が無く、種子が大きいものがあり、種子による草地造成に有望であることが判明した。この系統は従来知られていた系統とは遺伝的にまったく異なる系統であった。そこで、この系統を利用した草地造成試験を開始した。すなわち、東九州自動車道の高速道路法面の高層基盤吹き付け工法に、試作された「採種機」により採取された宮崎産のチガヤ2系統の種子を用いた結果、現地で発生した表土を利用した場合にはチガヤなどの在来野草の定着が良いことが明らかとなった。
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