研究概要 |
食品タンパク質をリン酸化すると、乳化特性、ゲル形成性、熱安定性などの機能特性が著しく向上することが知られている。また、リン酸基にはカルシウム吸収促進効果、免疫調節機能等の生理機能が期待できるので、卵白タンパク質(EWP)をリン酸塩存在下で乾燥加熱してリン酸化を行なった。EWPはオルソリン酸塩存在下よりピロリン酸塩存在下の方が効果的にリン酸化され、pH4,0,85で5日間乾燥加熱すると、EWPのリン含量は1.05となった。EWPのリン酸化の程度と対応して構成タンパク質のNative-PAGEの移動度も大きくなっており、リン酸化によってタンパク質のマイナスチャージが増大していることが明らかになった。ゲルろ過モードHPLCでタンパク質の重合を調べたところ、EWPの重合は加熱温度が高いほど、また加熱時間が長いほど大きくなったが、その程度は大きいものでなかった。酸・アルカリに対する安定性、ホスファターゼによる脱リンおよび^<31>P-NMRスペクトル解析から、EWPに導入されたリン酸基は、リン酸エステルの外の結合様式があることが示唆された。リン酸化により、EWPの表面疎水性は未処理のものの3.1倍に増大した。また、リン酸化によりプロテアーゼによるEWPの分解速度が増大したことから、EWP構成タンパク質はリン酸化によりunholdingされていることが示唆された。その結果、EWPの乳化活性および乳化安定性はリン酸により著しくに向上した。未処理EWP溶液はは80℃では80%以上が不溶化したが、リン酸化EWPは95℃の加熱でも90%以上が可溶化しており、溶液も透明であった。リン酸化EWPの熱誘導ゲルは、乾燥加熱によりゲル強度が強くなることが知られているが、リン酸化EWPは乾燥加熱のみのものよりゲル強度が高く、しかも透明ゲルであった。リン酸化EWPはリン酸カルシウム可溶化能を有していたことから、カルシウム吸収促進効果が期待できた。これらの結果から、ピロリン酸塩存在下での乾燥加熱はEWPの高機能化に極めて有効な方法であることが明らかになった。
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