研究概要 |
ヒト腸管由来のアシドフィルス菌はプロバイオティク系の乳酸菌として、腸管内で生育性のある乳酸菌を含んだ醗酵乳の製造に広く用いられるようになってきている。しかし、アシドフィルスは牛乳中での生育が一般的に悪いものが多い。前年の研究の結果から、牛乳中で比較的生育の良いアシドフィルス株は、生育の初期段階において、菌体外にプロテアーゼを分泌し、タンパクを分解して生育に必要な低分子窒素化合物を作り出す力の強いものであることが示された。また、カゼインなどのタンパク質の酵素分解物を牛乳に追加することによって、生育を促進できることが示唆された。もし牛乳中での生育が早まり発酵時間が短縮すれば、この菌を使っての発酵乳の製造が大変改善される。 そこでカゼインを食品添加物グレードのタンパク分解酵素である、プロテアーゼP,プロテアーゼN(Amano Enzyme, Japan)およびデビトラーゼ(Rhodia, USA)の3種のプロテアーゼで分解し、牛乳に添加した場合のヒト由来のL.acidophilus2菌株の牛乳中における生育の改善効果について調べた。その結果、いずれのプロテアーゼによる分解物も有効であったが、特にプロテアーゼPによる分解物の効果が高く、牛乳に固形分含量で0.15%のカゼイン分解物を添加することによって、牛乳中でのアシドフィルス菌の生育を大幅に向上させることが出来ることが判明した。このことから、牛乳に少量の低分子窒素化合物を追加することによって、プロバイオティクとしてのアシドフィルスを含む発酵乳の製造時間を短縮することができることが示された。
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