研究概要 |
Lactobacillus acidophilusグループ乳酸菌は、ヒト腸管の中から見出される乳酸桿菌の中の主要なものであり、プロバイオティク系の乳酸菌として、発酵乳の製造に使用されることが多くなってきている。しかしこの菌は一般的に牛乳中での生育が緩慢であるため、発酵に長時間を要する。そこでその原因解明と対策法の構築を目的として研究を行った。ヒト腸管由来のアシドフィルスグループ菌株の中から、L.acidophilus6株およびL.gasseri4株を用いて牛乳中での生育性を比較した。乳中での生育性と菌体外プロテアーゼの発現を追跡したところ、菌体外に作り出すプロテアーゼの活性の高い菌が乳中での生育性の良いことことが認められた。牛乳中では低分子窒素化合物が不足しているため、L.acidophilusは自らのプロテアーゼによって乳タンパク質を分解することが必要であり、このようなプロテアーゼ活性の強い菌株が牛乳中での生育も良好であるものと考えられた。そこで低分子窒素化合物として、カゼインを食品添加物グレードのタンパク分解酵素である、プロテアーゼP,プロテアーゼNおよびデビトラーゼの3種のプロテアーゼで分解し、牛乳に添加した結果、いずれの分解物も有効であったが、特にプロテアーゼPによる分解物を牛乳に添加することによって、アシドフィルス菌の生育を大幅に向上させることが出来た。このことから、牛乳に少量の低分子窒素化合物を追加することによって、プロバイオティクとしてのアシドフィルスを含む発酵乳の製造時間を短縮することができることが示された。 一方、ヨーグルト製造の主要菌であるStreptococcus thermophilusとL.acidophilusを混合して培養することによって、菌株によってはL.acidophilusの生育が促進されるもののあることを見出した。そこで山羊乳及び牛乳の両方についてL.acidophillus5菌株とS.thermophilus1菌株について各個に混合培養を行ったところ、特に生育の促進される組み合わせのあることを見出した。この両菌株は相互に補い合って生育を助長し合っていることが考えられ、このような組み合わせによって、発酵乳製造を容易にすることが可能となった。
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