研究概要 |
野生原種とされる動物が現存するヤギにおいて、家畜ヤギとその野生原種の最有力候補であるベゾアーおよびアイベックスのミトコンドリアDNA(mtDNA)全塩基配列情報を解読、比較し、家畜化による変異を明確にすることを目的とした。 家畜ヤギのmtDNA全長は16,623〜16,642bp、ベゾアーは16,641bp、またゴビアイベックスは16,789bpであった。以上3種の動物の蛋白質コード領域に鎖長の差異は無く、長さが異なったのはrRNAおよびD-loopであった。すなわち各動物のD-loop長は家畜ヤギが1195〜1214bp、ベゾアーが1213bp、ゴビアイベックスが1363bpであった。 家畜ヤギはD-loop領域の塩基配列からこれまでに系統学的に4つのグループに分類されている。すなわち改良品種に最も一般的なタイプA、東南アジアに一般的なタイプB、モンゴル在来ヤギにのみわずかに観察されるタイプCとDである。それぞれのタイプの個体について全塩基配列を解読したところ、ND1、MD2、COI、D4およびND6領域はタイプ間でアミノ酸置換の無い安定した領域であった。一方ATPase8、ATPase6、COII、COIII、ND3、ND4Lといった領域には0.4から3.1%という比較的効率のアミノ酸置換が認められた。さらにベゾアーの塩基配列は家畜ヤギの4タイプのうちの1つで、個体数の上で最も一般的なAタイプの配列と極めて高い相同性を示した。また家畜ヤギとゴビアイベックスを比較したところ、最も多くのアミノ酸置換が認められた領域はATPase8で置換率10.8〜12.3%、ついでATPase6で4.0〜4.9%、ND2の4.0〜4.3%、ND5の4.1%の順であった。逆に最も安定していたのはCOI領域の置換率0.6%およびCOII領域の0.6〜0.9%であった。
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