当該年度においては、PRVのEPO及びIE180 mRNAに対するリボザイム遺伝子を含む哺乳類用発現ベクターを構築することを計画して実験を行った。実験には、標的mRNAを切断するリボザイムの分子設計が容易に行われるよう、保有している試験管内実験用リボザイム設計ベクターを改変し、このベクターにブタ培養細胞内でリボザイムが効率よく機能するよう、リボザイム設計用遺伝子の上流及び下流に、それぞれRNAポリメラーゼIIIのプロモータ配列及びヘリックス構造をとる配列を連結した。 ところで、このベクターに導入されているリボザイム遺伝子は、tabacco ringspot virus(TRSV)サテライトRNAのマイナス鎖由来のヘアピン型リボザイム遺伝子である。ヘアピン型リボザイムは、標的とするmRNAと結合する領域(基質結合ドメイン)と切断するために必要な領域(触媒ドメイン)に分かれている。一方、ヘアピン型リボザイムは、arabis mosaic virus(ArMV)及びchicory yellow mottle virus(CYMV)のサテライトRNAのマイナス鎖からも発見されており、同一の標的RNAに対してそれぞれのリボザイムの触媒ドメインを利用した場合、切断能力に差があることが知られている。そこで、PRVの様々な遺伝子に対して、より効果的な遺伝子発現抑制を行えるリボザイムを選択できるよう、ArMV及びCYMV由来のリボザイム遺伝子を含む設計用のベクターも構築することにし、それらを調製するごとができた。現在、これらのベクターを用いてPRVのmRNAに対するリボザイムの設計を行っている。 また、培養細胞レベルの研究から、個体での実験に向けての基礎的技術の開発も本年度行い、大きな成果も得ることができた。
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