本年度は、RT-PCRによりイヌ・アイソタイプ特異的配列を遺伝子クローニングにより明らかにした。その結果、クラスIおよびIVbについてはイヌ、ヒト、マウス、ラットで完全に同一配列であるが、クラスIIIおよびIVaについては若干の動物種差が認められた。すなわち、クラスIIIはヒトと同一であり、クラスIVaはマウスと100%相同であった。また、これらの配列をプローブとしたリボヌクレアーゼ・プロテクションアッセイによりmRNA発現の組織分布を解析したところ、クラスIが組織普遍的に見られるのに対し、クラスII、IIIおよびIVaは脳に特異的であり、クラスIVbは精巣で極めて高く発現していることを確認した。 一方、抗癌剤耐性獲得機構とβ-チューブリン・アイソタイプ変換機構の解析のため、既に、イヌ乳腺悪性混合腫瘍由来骨肉腫瘍細胞のタキソール耐性株を樹立し、各アイソタイプの発現変化についてリボヌクレアーゼ・プロテクションアッセイによりそのmRNA発現を解析した。その結果、クラスIVaアイソタイプが有意に上昇し、その上昇はタキソール濃度に依存性であった。すなわち、タキソール感受性の親細胞と比較してクラスIVaアイソタイプmRNA相対量が10nMタキソール耐性株では2倍に、20nM耐性株では3〜4倍に上昇することを見いだした。この結果は、少なくとも悪性混合腫瘍においてはクラスIVaアイソタイプが抗癌剤耐性に寄与していることが示唆され、このことはヒトのある種の癌とも共通の現象であった。 さらに、生体内での抗癌剤耐性を検討するため、マウス・メラノーマ由来B16株を用いて抗癌剤耐性株を樹立し、これを同系統のC57BL/6マウスへ移植し、その増殖挙動などを検討している。さらに、RT-PCRによりマウス・アイソタイプ特異的配列も併せて遺伝子クローニングにより明らかにし、これらの配列をプローブとしたリボヌクレアーゼ・プロテクションアッセイによりmRNA発現の組織分布および抗癌剤耐性獲得に伴うアイソタイプの変換を解析した。
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