抗癌剤耐性獲得機構とβ-チューブリン・アイソタイプ変換機構の解析のため、既に、イヌ乳腺悪性混合腫瘍由来骨肉腫瘍細胞のタキソール耐性株を樹立し、各アイソタイプの発現変化についてリボヌクレアーゼ・プロテクションアッセイによりそのmRNA発現を解析した。その結果、クラスIVaアイソタイプが有意に上昇し、その上昇はタキソール濃度に依存性であった。すなわち、タキソール感受性の親細胞と比較してクラスIVaアイソタイプmRNA相対量が10nMタキソール耐性株では2倍に、20nM耐性株では3〜4倍に上昇することを見いだした。この結果は、少なくとも悪性混合腫瘍においてはクラスIVaアイソタイプが抗癌剤耐性に寄与していることが示唆され、このことはヒトのある種の癌とも共通の現象であった。 さらに、生体内での抗癌剤耐性を検討するため、マウス・メラノーマ由来B16株を用いて抗癌剤耐性株を樹立し、マウス・アイソタイプ特異的配列をプローブとしたリボヌクレアーゼ・プロテクションアッセイによりmRNA発現の組織分布および抗癌剤耐性獲得に伴うアイソタイプの変換を解析した。その結果、クラスIIアイソタイプが有意に上昇した。すなわち、ビンクリスチン感受性の親細胞ではクラスIIがほとんど検出されないのに対して、5nMビンクリスチン耐性株では10倍以上に上昇することを見いだした。次いで、マウスゲノムDNAよりクラスIIβ-チューブリンのプロモーター領域を含む遺伝子を、ホタル・ルシフェラーゼをレポーター遺伝子に持つプラスミドベクターにクローニングし、ビンクリスチン反応性領域を検索した。その結果、数カ所のSp1結合領域に加えて、1カ所のCREB結合領域および1カ所のp53が結合領域見いだされた。さらに、耐性株で上昇する可能性のある転写因子についてはゲルシフトアッセイにより同定を試みたところ、第1イントロン内に存在するp53結合領域に結合する転写因子が、ビンクリスチン暴露に伴って激減することが判明した。
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