研究概要 |
現在、日本各地においてクローン牛の誕生が次々に報告されているが、胚移植による受精卵着床時の流産率は95%を越え、改善の見通しは立っていない。着床期における流産率の高さはクローン動物で際立っているが、胚移植においても流産率は50%を越え、平成16年までにこの流産率を全国平均50%以下に抑えることが、国家戦略ともなっている。この流産の中では着床期流産が最も多いことが明らかとなっているが、受精卵の着床を制御する分子機構が明らかでないことが最も大きな原因となって、畜産の現場では抜本的な対策が取れないという現状にある。従って、世界レベルでの食資源動物の増産体制を目指す上で、着床現象の機構を明らかにすることは、妊娠制御機構の研究の中でも最優先事項である。そこで本研究では、実験動物(マウス)を材料として受精卵の着床誘導機構の解析を行った。 本年度は、得られたマイクロアレイのデータから,マウスの胚盤胞が子宮上皮に接着する妊娠4日に正常マウスと比較してLIFKOマウスおよび着床遅延マウスで有意に発現が抑制されている遺伝子約50個を本実験で検出した。これら候補分子をその既知の機能により数群に分類し,そしてその単位により、in vivo screeningを行った。すなわち、数群に分類した候補分子の群の数に一致するマウスの群(すべて雌)を作製,それぞれを交配し、翌日の膣栓確認日に、作製したS-oligo DNA群を右側子宮角へ投与した。妊娠7日目に、着床胎子数の計測を行い,胎子数の増減が確認されない群については、すべての候補分子を棄却し、増減が認められた群に着いてのみscreeningを続けた。さらに、感染に細胞分裂を必要としないレンチウイルスベクターと、最近有用性が注目されているsiRNA法を組み合わせた新しい組織特異的ノックアウト(ノックダウン法)を開発中である。
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