研究概要 |
マウスの着床に不可欠な分子は、現在までに白血病抑制因子(LIF)しか発見されていない。そこで,LIF KOマウス、および遅延着床マウスを用いて、マイクロアレイ法により着床誘導の分子機構の解析を行った。今回用いたマイクロアレイはAffymetrix社のMG_U74Av2アレイであり、12,489の遺伝子の解析が可能であった。マウスの胚盤胞が子宮上皮に接着するのは妊娠4日(膣栓確認日0日)であるが、この時期に正常マウスと比較してLIF KOマウスおよび着床遅延マウスで有意に発現が抑制されている遺伝子約50個を本実験で検出した。次に,着床遅延マウスを作製し着床期にLIFを投与することにより、LIFの着床期における役割を明確化した。選定した約50の遺伝子のうち、LIFにのみ発現調節を受けていると判断される分子はその約80%であった。マイクロアレイによる検索では、サンプリングの間隔が1日単位であったが、今回のLIF投与実験においては、LIF投与後の経過時間を数時間の単位に短縮した。その結果、LIFの作用は、血中濃度の一過性の上昇後、数分以内に起きる迅速なものから、上昇後6時間後に初めて起きるものまで多彩であった。さらに,CD9について発現解析および機能解析を行った。CD9は、精子の透明帯通過に必須の分子であるが、着床期にも明確な作用を有していた。着床期では遺伝子およびタンパク質レベルでの発現誘導が起きるばかりでなく、CD9KOマウスを用いた受精卵移植試験においても明確な着床阻害が確認された。本また,ハイスループット機能解析のために行ってきたレンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入法についても結果を得た。今回用いた導入遺伝子はLacZとAP遺伝子のみであるが、実験群における強力なLacZ遺伝子誘導とZAPマウスにおけるAP発現誘導が確認された。
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