好中球が病原微生物の感染などで活性化されると、NADPHオキシダーゼによって酸素からスーパーオキシドが産生され、つづいて、スーパーオキシドディスムターゼによってスーパーオキシドから過酸化水素が産生され、さらにミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって、過酸化水素から次亜塩素酸が産生される。このような一連の反応で産生された種々の活性酸素は生体内に侵入した病原微生物の殺菌を営んでいるが、どの活性酸素種がどんな病原微生物の殺菌に必要なのかは必ずしも明らかではない。そこで、MPOノックアウトマウス[MPO(-/-)マウス]とNADPHオキシダーゼノックアウトマウス(CGDマウス)を交配させて、MPOとNADPHオキシダーゼの二重欠損マウス[MPO(-/-)/CGDマウス]を作製し、次亜塩素酸塩素酸もスーパーオキシドも産生できない好中球を持ったマウスのカンジダ菌に対する感染防御能を解析した。その結果、MPO(-/-)/CGDマウスの感染防御能はCGDマウスの防御能と同等であることが判明した。すなわち、NADPHオキシダーゼが欠損していると、MPOの基質となる過酸化水素は全く供給されないためにMPOが機能できないことが分かった。 一方、好中球からの活性酸素やプロテアーゼの放出が長時間持続すると正常組織にも傷害を及ぼす。この組織傷害を回避するため、活性化した好中球は速やかに死に至る。好中球の細胞死には活性酸素が関与している可能性があるが、その詳細は明らかでない。そこで、MPO(-/-)マウス、CGDマウス、およびMPO(-/-)/CGDマウスの好中球を用いて、好中球の細胞死におけるスーパーオキシドと次亜塩素酸の関与を検討した。その結果、野生型好中球よりもMPO(-/-)好中球やCGD好中球の方が、さらにMPO(-/-)好中球やCGD好中球よりもMPO(-/-)/CGD二重欠損好中球の方が、アポトーシスが遅延することが分かった。すなわち、好中球のアポトーシスは、好中球自身が産生する活性酸素によって制御されていることが明らかになった。
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