生体は、様々な病原微生物の感染を防御する機能を備えており、主に血液中の白血球がこの機能を担っている。好中球は全白血球の約70%を占め、様々な活性酸素や蛋白質分解酵素を産生し、これにより病原微生物に対する初期感染防御を営んでいる。しかし、好中球のどの活性酸素産生酵素がどの程度生体防御を担っているのかについて、個体レベルでの解析は乏しい。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、好中球と単球に存在する活性酸素の代謝酵素である。病原微生物の感染などによって好中球が活性化されると、まず好中球膜上に存在するNADPHオキシダーゼによりスーパーオキシドが産生され、つづいで.スーパーオキシドジスムターゼにより過酸化水素(H_2O_2)に変換される。MPOはH_2O_2と塩素イオンから次亜塩素酸が生成される反応を触媒する。このような機構によって好中球から産生された活性酸素は感染初期の迅速な殺菌を営んでいるが、どの活性酸素種がどんな病原微生物の殺菌に必要なのかは必ずしも明らかではない。そこで、野生型マウスとMPO-KOマウスのクリプトコッカス菌に対する生体防御能を比較したところ、MPO-KOマウスはその防御能が顕著に低下していることが判明した。 一方、好中球からの活性酸素の産生が長時間持続すると正常組織にも傷害を与えて炎症性疾患を誘発することが懸念される。そこで、MPO-KOマウス、NADPHオキシダーゼ欠損マウス、およびその両酵素の二重欠損マウスを用いて、潰瘍性大腸炎における好中球由来の活性酸素の関与を個フレベルで解析した。
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