本研究では、特定RNAのみを特異的に切断するリボザイムに着目し、哺乳動物における特定遺伝子発現をRNAレベルで特異的に抑制できる新しい「遺伝子発現抑制システム」の開発を目的としている。この開発のために、ラット初期胚にて、リボザイムの標的とする蛍光タンパク質遺伝子が発現する発現調整領域を含む遺伝子コンストラクのトを設計した。すなわち、EGFPおよびdsRedの蛍光タンパク質遺伝子の上流にCMV-IEプロモーターを、下流にSV40ターミネーターを有する遺伝子コンストラクトを構築し、このうちEGFPのコンストラクをラット前核受精卵および2細胞期胚の核内へ顕微注入した。受精卵前核へ注入された遺伝子は注入後24時間後から、また、2細胞期胚においては注入後6時間後から、その蛍光が確認されはじめた。さらに、注入された遺伝子は注入48時間後には、前核期受精卵では66%で、また2細胞期胚においては、その70%で、蛍光が確認された。同時に、個体に組み込まれた特定遺伝子の発現抑制のモデルとしてこれらの蛍光遺伝子を標的遺伝子として、上記遺伝子コンストラクトを受精卵前核へ注入して、偽妊娠誘起させたレシピエントラットの卵管へ移植した。その結果、移植した注入胚由来の産子がえられた。これらの産子における注入遺伝子の存在を検査中である。さらに、これらの顕微注入にもちいた遺伝子の発現を抑制するようなヘアピン型リボザイムを設計した。
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