筋肉特異的キナーゼ(Nrk)の個体レベルでの機能解析:筋量決定機構の基礎的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14560257
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 金井 正美 杏林大学, 医学部, 助手 (70321883)
• 研究分担者: 川上 速人 杏林大学, 医学部, 教授 (30146542) ; 林 良博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究所, 教授 (90092303)
• キーワード: 骨格筋発生 / キナーゼ / GCK / トランスジェニックマウス / MAP4K

研究概要

個体レベルでのNikサブファミリーの機能解析を行うことを目的として、Nrk/Neskの発現パターンと機能相補する可能性が推測されるNikサブファミリーに属する他のメンバー(Nik, Tnik[Traf2-and Nck-interacting kinase], Mink[Misshapen/Niks-related kinase])の発現パターンとを比較検討した。
その結果、Nik、Tnikは、Nrk/Nesk同様に筋節に強く発現し、発現部位、発現時期の両者において互いにオーバーラップした発現特異性を示した(Nik、Tnikは、筋節以外にも神経管や背側神経節にも強い発現が認められた)。この結果は、Nrk/Nesk欠損個体の骨格筋形成過程において、Nik、Tnikが機能相補し表現系が現れない可能性を強く示す。そこで、NRK/NESKの機能を個体レベルで検討するために、Nrk/Neskと発現がオバーラップするmyogeninのpromoter下流にNrk/Neskドミナントネガティブ変異型および野生型を組み込んだトランスジェニックマウスを作成した。ドミナントネガティブ変異型10ラインと野生型7ラインのtransgeneを確認しており、胎生期の骨格筋形成過程における表現系を解析中である。作出したラインのうち、Nrk/Neskドミナントネガティブ変異型および野生型共に、肉眼解剖学的所見には各臓器の構成は変化が認められず、正常であった。しかしながら、ドミナントネガティブ変異型においてオトガイ舌筋、舌骨筋を始めとする咀嚼、嚥下に関与する筋群の脆弱化が認められ、それが要因と思われる個体サイズの減少、発育障害が認められ、Nrk/Neskが筋形成過程の大きさの決定に関与する可能生が示唆された。現在、詳細に骨格筋形成過程におけるこれらの筋構成蛋白や遺伝子発現について解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Kanai-Azuma M 他10名: "Depletion of definitive gut endoderm in Soxl 7-null mutant mice"Development. 129(10). 2367-2379 (2002)
• [文献書誌] Noma T, Kanai Y, Kanai-Azuma M, 他6名: "Stage-and sex-dependent expressions of Usp9x, and X-linked mouse orthologue of Drosophila Fat facets, during gonadal development and oogenesis in mice"Mech. Dev. GEP. 2. 87-91 (2002)
• [文献書誌] 水上拓郎, 金井克晃, 金井正美 他4名: "マウス未分化生殖原基の器官培養による精巣、卵巣への分化誘導"The Journals of Reproduction & Development. 48. XX-XXIII (2002)
• [文献書誌] 金井克彰, 水上拓郎, 金井正美 他5名: "哺乳類の性分化、SryかMis//テストテロン分泌まで"比較内分泌学会ニュース. 106. 14-21 (2002)
• [文献書誌] Nakano, K, Kanai-Azuma, M 他6名: "Cofilin Phosphorylation and Actin Polymerization by NRK/NESK, a Member of the Germinal Center Kinase Family"Exp. Cell. Res. (in press). (2003)
• [文献書誌] Tam PPL, Kanai-Azuma, M Kanai Y.: "Early endoderm development in vertebrates: lineage differentiation and morphogenetic function"Curr Opin Genet Dev. (in press). (2003)