研究課題
各種野生の爬虫類の寄生線虫症の文献的調査を行い、総説論文をまとめた[8]。また、野生小哺乳類に寄生し、宿主との共進化をすると目されるHeligmosomumの分類の基本となる記載を、チェコの研究者と共同で整理し、チェックリストを公表した[5]。野生鳥類(本邦では希少種で、国の保護増殖事業対象で対象種シマフクロウを含む)の血液内の線虫類(ミクロフィラリヤなど)を検査し、それと平行して病原原虫類モプロテウス属の寄生状況を調査した[3]。線虫と原虫との混合感染により症状をより悪化させる可能性があるものの、今回の調査ではそのような事例は認められなかった。しかし、中間宿主が共通なものも存在するので警戒が必要であろう。また、野生哺乳類についても、線虫検査の一環で血液原虫バベシアの報告を行なったが[6,11]、これも同じ着眼点からである。昨年の調査で、トキを再導入しようとしている新潟県の野鳥の線虫類の調査を行なったが、その際、ウイルス検査もあわせて実施したものが刊行された[1]。今回、ユニークな試みとして、考古学的な調査での補助に寄生虫学の応用の可能性を検討した。それは、北海道森町の縄文末期のとされる地層で、周囲の状況から推定されるに、タヌキのため糞場と思われるものが発見された。これを確かめるために、虫卵浮遊法を行い、タヌキカイチュウ卵の検出を試みたが、餌となった野ネズミ類以外、陰性であった[4]。平成16年度は、本学に文部科学省ハイテクリサーチ研究プロジェクトを受けた施設「酪農学園大学野生動物医学センター」が開設、運用された。そのために、科学研究費を受けた多様な線虫症の研究が着手されたが、いずれも途中経過のみを学会集会の口頭発表行なわれた。しかし、その要旨はセンターの概要紹介の報告文[12]に記載されている。以上のように、多様な野生動物の線虫類症の疫学調査を行い、その意義つけを行なった。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (11件)
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