研究課題
1.牛における豚丹毒菌抗体の保有状況わが国の牛における豚丹毒菌感染を血清学的に確認するために、北海道、岩手、埼玉、静岡、石川、島根、徳島、長崎及び沖縄の9道県で1988〜1992年に合計854頭の牛から採取された血清について生菌発育凝集反応を行い、本菌に対する抗体価を測定した。その結果、ほとんどの血清が抗体陽性で、4〜128倍の抗体価を示した。76%の血清は32倍以上を、34%の血清が128倍以上をを示した。抗体価は南で高く、北で低い傾向を示した。また、養豚が行われていない地域における牛の血清は明らかに低い抗体価を示した。以上より、わが国の牛が豚丹毒菌に感染していることが示され、牛での症例が存在した可能性及び午が本菌のキャリアーとなることが示唆された。2.と畜場の健康牛における豚丹毒菌の分布牛における豚丹毒菌の分布状況を調べるために、1998〜1999年に山形、宮城、東京、長崎の4都県のと畜場に出荷された臨床症状のない健康牛、合計1,236頭の扇桃から菌分離を実施した。菌分離において、増菌用のBHIブロスにツイーン80を0.1%、馬血清を5%、ゲンタマイシン(GM)を50μg/ml、窒化ソーダを0.1%、クリスタル紫を0.001%加えたものと、分離培地としてBHI寒天にツイーン80を0.1%、GMを50μg/ml、窒化ソーダを0.1%加えたものとの組合せが優れていることが判った。分離豚丹毒菌の同定は形態、TSI寒天での糖分解と硫化水素産生性、ゼラチン培地における試験管ブラシ状発育などを指標として行い、分離株についてはさらに20種の糖の分解能を調べた。菌分離の結果、79例(6.4%)の扇桃から豚丹毒菌が分離された。以上より、健康牛の豚丹毒菌保菌が明らかとなり、牛は牛間及び他の動物や人への感染源となる可能性が示唆された。
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