1.スクロース分解酵素生産におよぼす炭素源の影響 炭素源として10gl^<-1>のスクロース、グルコース、セロビオース、あるいはMethyl β-D-Glucopyranosideを用いてLactobacillus paracasei 1532株およびLactococcus lactis IFO 12007株を培養し、経時的に酵素活性を測定した。Lb.paracasei 1532株は炭素源をスクロースあるいはセロビオースとした場合において、高いスクロース分解酵素生産性を示すとともに、Methyl β-D-Glucopyranosideあるいはグルコースを炭素源としてもスクロース分解酵素活性が認められた。このことから、本菌株のスクロース分解酵素は構成酵素であることが推察された。特にMethylβ-D-Glucopyranosideでも増殖可能であることからスクロース分解酵素の一部分はβ-グルコシダーゼであることが示唆された。また、Lb.paracasei 1532株と、Lc.lactis IFO 12007株のスクロース分解酵素生産性を比べると、Lc.lactis IFO 12007株はスクロースを炭素源とすると増殖は遅く、スクロース分解酵素活性もLb.paracasei 1532株と比べ非常に低い値であり、Lb.paracasei 1532株はスクロース分解酵素生産性が高いことが分かった。 2.缶詰パイナップルシロップからの連続乳酸生産における速度論的解析 グルコースで前培養を行ったLb.paracasei 1532株を用いて糖濃度20gl^<-1>の生産培地で培養を開始し、糖濃度100gl^<-1>の濃縮シロップ培地を用いて連続乳酸生産を行った。希釈率0.20h^<-1>でウォッシュアウトが始まるまではスクロースを含む全ての糖が代謝された。速度論的解析の結果、最大比増殖速μ_m=0.24h^<-1>および基質飽和定数K_s=2.4gl^<-1>1であった。スクロースで前培養を行った、Lc.lactis IFO 12007株を用いて同様な連続乳酸生産を行った。グルコースとフルクトースはすべて消費されたが、スクロースはまったく代謝されずに培養液中に蓄積されていった。速度論的解析の結果、μ_m=-0.04h^<-1>およびK_S=-53.06grl^<-1>であった。速度論的解析からもLc.lactis IFO 12007株はグルコースとフルクトースによりスクロースに対する強い異化代謝物抑制を受けるが、Lb.paracasei 1532株はほとんど影響を受けないことが明らかになった。
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