1、線毛発生における中心子の複製機構には、二つの経路が知られている。すなわち既存の中心子の周囲に形成される中心子経路と既存の中心子に無関係の非中心子経路、すなわち中心子のde novoの複製経路である。細胞において、中心子は核の周囲のゴルジ領域に存在し、また線毛発生における複製中心子は、多数のvesicleと共存する。細胞におけるゴルジマトリックス蛋白質と中心子との関係、de novo複製した中心子とゴルジマトリックス蛋白質との関係について、種々の培養細胞、種々の実験動物の線毛上皮細胞をもちいて光顕免疫組織化学的、電顕免疫組織化学的、細胞生物学的に解析した。中心子には、細胞周期をつうじてGolgi58Kが付随し、この局在は、brefeldin Aやcolcemidなどの微小管重合阻害剤などの薬剤投与によっても阻害されなかった。複製した基底小体にもゴルジマトリックス蛋白質が局在し、中心子のde novo複製にゴルジマトリックス蛋白質の関与が示唆された。 2、細胞先端部に移動して基底小体となった複製中心子からは、線毛が伸長し、基底小体付属構造が形成される。ルートレットは基底小体の近位端から細胞深部にむかう横紋を持った構造で、線毛運動の制御に密接に関係していると考えられている。ルートレットの構成蛋白質としてルートレチン、195Kたんぱく質が見出されている。ルートレットに対する抗体を利用して、ルートレットの機能の分子機構について、細胞生物学的、形態学的手法を用いて解析した。ルートレットは、線毛を延ばした基底小体だけでなく、普遍的に中心子に付随する構造であり、中心子の位置の決定、細胞先端部における基底小体の固定に深く関与することが見出された。
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