(1)GOPCノックアウトマウス(GOPC-KO-M)を用いた異形精子形成過程の解析 GOPC(ゴルジ装置関連PDZ-コイルドコイルモチーフ含有タンパク質)-KO-Mでは頭部が丸く尾部が頭部に巻き付いた異形精子が形成されて不妊になる。今回精子形成過程にある精子細胞と精巣上体内成熟過程にある精子を形態的に調べ、これらの異常の形成過程を解析した。精子変態の初期にacroplaxome(アクチン線維とケラチン線維を主成分とするシートで先体と核を接着)が形成されるが、-/-では先体胞の核表面への接着や先体胞同士の融合の不全がみられ、その結果と考えられる形態異常がドミノ式に誘導された。すなわち、先体胞の消失⇒先体の縁に形成されるperinuclcear ringの形成異常⇒manchette(微小管の腰蓑状構造物)の形成異常⇒後輪の形成不全や先体の消失による細胞質の核周囲への残存などである。従って精子形成過程にもアクチン線維・微小管等の細胞骨格群が関与すると推察される。他方、軸糸・外側粗大線維・線維鞘・ミトコンドリア鞘・後輪等の尾部の構造は、一見正常に形成され、精子が精巣上体頭部に入るまで維持された。しかし、精巣上体頭部を通過中に精子の尾部が頭部に残存する細胞質の中に移動して核周辺に巻き付いた。これは正常個体で細胞質小滴が精子の頸部から尾部中片末端に移動する精巣上体の場所とよく一致したので、尾部の巻き込みは細胞質小滴の移動と関係する機構で起ると推測される。 (2)Aquaporin 7ノックアウトマウス(AQP7-KOM)精子形成過程の解析 ホモ個体半数の円形精子細胞の核にsignet-ring状パターンを示す濃縮異常が認められた。この事実はAQP7が精子形成過程で核の濃縮(核の内から外への水の移動)に関与する事を示唆する。
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