研究概要 |
精子細胞の変態過程では著しい形態変化と体積減少が起こる。前者にはアクチンや微小管、後者には水チャンネル(Aquaporin, AQP)の関与が指摘されている。本研究では免疫組織化学、電子顕微鏡、KO-マウス(KO-M)を用いてこれらの精子形成への関与を解析した。 (1)AQP7,8,11の精上皮における局在 AQP7と11は造精細胞にAQP8はSertoli細胞に局在することが示唆された。従って7と11は補償し合う可能性が高い。 (2)AQP7-KO-M精子形成過程の解析 ホモ個体半数の円形精子細胞の核にsignet-ring状パターンを示す濃縮異常が認められた。これはAQP7が精子形成過程で核の濃縮(核の内から外への水の移動)に関与することを示唆する。 (3)GOPC-KO-Mを用いた異形精子形成過程の解析 GOPC(ゴルジ装置関連PDZ-コイルドコイルモチーフ含有タンパク質)欠損マウスでは頭部が丸く鞭毛が頭部に巻き付いた異形精子が形成され不妊になる。精子変態初期にacroplaxome(アクチンが主成分で、先体を核膜に接着する)が形成される。-/-では先体胞の核表面への集合や融合不全がみられ、形態異常がドミノ式に誘導された。すなわち先体胞の消失⇒先体の縁に形成されるperinuclear ringの形成異常⇒manchette(微小管の腰蓑状構造物)の形成異常⇒後輪の形成不全や細胞質の核周囲への残存などである。従って精子形成でもアクチンや微小管の形態形成への関与が示唆される。鞭毛は一見正常に形成され、精子が精巣上体頭部に入るまで維持された。しかし、精巣上体頭部を通過中に、鞭毛が頭部に残った細胞質の中に移動して核に巻き付いた。これは+/+精子で細胞質小滴が頸部から末端側に移動する場所と一致するので、鞭毛の巻き込みには細胞質小滴移動機構が関与すると推測される。
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