研究概要 |
2003年度解剖学実習体27体について調査1:1)頚神経ワナ外側型(下根が内頚静脈の外側を走る)と副横隔神経(鎖骨下静脈の前を走る)は静脈との局所解剖学的特徴に重要な共通点を認める.頚神経ワナ外側型19(5)例、内側型29(8)例の中,副横隔神経の併存した例は( )に示した例数である.両タイプの出現率には相関関係は認めない.2)頚神経ワナの内側型と外側型,横隔神経と副横隔神経についての左右での出現頻度にも相関関係は認めない.2:頚神経ワナの構成根分節、筋枝の分岐状態その由来分節などを総合的解析を試みた.頚神経ワナの構成をみると,内側型ではC2のみ由来(1例),C2,3由来(22例),C3のみ由来(8例)に認められた.外側型ではC2,3由来(7例),C2,3,4由来(1例),C3のみ由来(10例),C3,4由来(1例)に認められた,外側型の方が内側型に比較して構成根分節が低いことが明らかである.特に筋枝の中でも肩甲舌骨筋,胸骨舌骨筋の上部に分布する筋枝に注目して分析する.内側型ではC3成分の合流点より下部からこの筋枝が分岐する例が多く(9例)認められた.しかし外側型では頚神経ワナのループの頭側から尾側まで多様の部位から分岐していることが判明した.この両者の相違点は内側型では一束に集束してから再び分散する形式を取るのに対して,外側型では分散する形式を取ると対比できる.上肢への神経,血管の局所解剖学的構成の特徴を比較すると,腕神経叢の構成についても集束型と分散型を区別できる.末梢神経の束構成の特徴は集束型、分散型を形成するという,基本的形態形成の原則に基づく特徴と理解し、説明できることを明らかにしたことの意義は大きい.3:頚神経ワナの上根の構成,舌下神経XIIとC成分の合流と分布について,肉眼とルーペによる観察を併用して解析した結果,全例でXIIとC1,2成分はいったん合流して一束を形成している.しかし,その束形成の形や程度は多様である.相互の束形成が緩やかで浅い溝で区別できるもの大きい島を形成しているもの、近位で小さい窓を形成しているものなど,両者がどのように混ざり,どのように再配分され分布していくかは,実体顕微鏡による神経繊維解析を進めて明らかにしたい. この研究実績に関連する発表と討論の記録は次のとおりである. 1)特別講義:腋窩の動脈と神経の形態形成学 金沢医科大学2003.5.6 2)特別講義:頭頸部を考える横隔神経群と鎖骨下静脈の解析 岐阜大学医学部2003.9.16 3)第11回マクロ解剖夏期セミナー(新潟)腋窩の局所解剖学 上肢の神経,血管などの形態形成の特徴とその意義 新潟大学医学部解剖学第一講座2003.7.22〜8.2
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