平成14年度に引き続き、光刺激受容伝達マイクロマシーナリーの解析に着手した。免疫細胞化学・免疫沈降・ウエスタンブロット及びマススペクトロメトリーにを用いた解析に必要な材料である新鮮なウシの網膜が、BSE検査の実施によって入手不可能になったことから、材料を脊椎動物の中でも視細胞外節が大きなウシガエル(bullfrog)に替えた。カエルの光刺激受容伝達関連タンパク質に対する抗体の入手及び作成する目的で、マススペクトロメトリーを用いて視細胞外節(ROS)タンパク質の網羅的同定作業を開始した。BullfrogのROS画分を単離・精製し、等電点電気泳動とSDS-PAGEによる二次元電気泳動によって展開し、クマシーブルー(CBB)染色を行った。1.5枚の網膜から単離・精製したROS画分に由来するタンパク質スポットが136個検出できた。これらのタンパク質スポットを切り出し、in-gel digestionを行って、生じたペプチド混合物の質量をHPLC直結型マススペクトロメトリー装置を用いて測定した。得られたペプチドマスデータをWEBベースの検索プログラムMascotを用いて解析したところ、二次元電気泳動で検出されたタンパク質スポット136個の内、35個のタンパク質スポットを同定できた。それらは、視細胞外節由来のrhodopsin、phosphodiesteraseα・β、transducinα・β、arrestin、s-modulinを含む14個と、内節由来のHSC70、enolase、GTP-rho binding protein、neuronal intermediate filament、ATP synthase等を含む18個、及び両者に共通なtubulinα・β、actinであった。Bullfrogタンパク質のデータベースは哺乳類当に比べて充実度が低いにも関わらず、多くのタンパク質を同定できた。その多くはアフリカツメガエル(xenopus laevis)やゼブラフィッシュ(zebrafish)との相同性を有していた。
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