脊椎動物の視細胞杆体外節(ROS)は多数の膜性円板が規則正しく堆積して構成され、それらの円板膜が外節先端での廃棄と基部での生成を生涯繰り返している。この特殊で動的な構造を持つ外節円板膜上にはロドプシンをはじめとする光刺激受容伝達関連タンパク質群が無数に存在し、光を受容すると効率的な光刺激伝達カスケードが働く。このカスケード反応はきわめて短時間で進むので、それらのタンパク質群を互いに至近距離に集積する足場となる構造関連タンパク賛が存在し、光刺激受容伝達マイクロマシーナリーを形成していることが予想される。このような課題のもとに本研究に着手した。免疫細胞化学、免疫沈降、ウエスタンブロット及びマススペクトロメトリーを用いて、tubulinα・β・γとtauが円板膜上に共局在すること、'tubulinαとグアニル酸シクラーゼが結合していること、tubulinβ・γとannexinが結合していることを明らかにし、tubulinが光刺激受容伝達マイクロマシーナリーの足場を形成していることを初めて明らかにした。次に、新鮮なウシの網膜がBSEによって入手不可能になったことから、材料を脊椎動物の中でも視細胞外節が大きなウシガエルに替え、外節タンパク質の網羅的同定作業を開始した。二次元電気泳動で検出されたタンパク質スポット136個の内、マススペクトロメトリーによって35個のタンパク質スポットを同定できた。それらは、視細胞外節由来のrhodopsin、phosphodiesteraseα・β、transducinα・β・arrestin、s-modulinを含む14個と、内節由来のHSC70、enolase、GTP-rho binding protein、neuronal intermediate filgment、ATP synthase等を含む18個、及び両者に共通なtubulinα・β、actinであった。
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