研究概要 |
今回、我々はPdx1蛋白とSUMO-1が結合することを解明した(Am J Physiol, Endocrinology and Metabolism,284,E830-840,2003)。Pdx1蛋白はリン酸化以外にSUMO化による修飾を受け、Pdx1蛋白が46kDaの分子量を示すことはSUMO-1蛋白と結合したためであると考えられた。またSUMO-1発現を抑制すると、Pdx1のmRNA発現は変化せずPdx1の蛋白レベルのみに発現抑制を認めたことから、SUMO化はPdx1の蛋白発現に影響し、またpost-translational modificationに関与することが示唆された。さらにPdx1蛋白の機能調節機構にSUMO化が関与することを報告した。SUMO化によりPdx1蛋白は核内に局在し、insulin遺伝子のpromoterに作用しその活性を上昇させることが示唆された。またSUMO化されないPdx1蛋白はproteasomeにて分解されると考えられ、SUMO化がPdx1蛋白の安定化に重要であると考えられた。以上よりSUMO-1のPdx1蛋白における修飾はPdx1蛋白の核内局在や安定化に関与し、その結果Pdx1によるinsulin遺伝子の転写調節を促進することを解明した。 さらに、過酸化脂質が耐糖能に如何なる影響を及ぼすかを検討する目的で、ビタミンE欠乏過酸化脂質食にてラットを飼育し、何週目より耐糖能異常をきたすか否かを検討した。飼育されたラットは食餌中の過酸化脂質濃度に応じて、血中及びひらめ筋肉中の酸化化脂質濃度は上昇し、耐糖能異常は8週目より認められた。ビタミンEと過酸化脂質を同時に加えた食餌を与えても耐糖能異常は認められたことから、過酸化脂質が直接に耐糖能異常を惹起することを証明した。このメカニズムは1)膵臓においては過酸化脂質が膵β細胞に作用することでNFk-Bの発現を誘導し、膵β細胞死を惹起しインスリン分泌低下をきたすこと、2)筋肉においては過酸化脂質がインスリンreceptorに関与するIRS-1の蛋白発現を低下させ、耐糖能異常を惹起することを証明した(Diabetes research and clinical practice,67(2005)99-109)。
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