研究概要 |
本研究の目的は,発生学において時々刻々変化する胎児の変形過程を理解するために,MR(核磁気共鳴)マイクロスコープなどを用いて胎児標本から三次元画像を抽出し,これにより取り出された胎児の外表・内臓形状を提示することによる発生学教育・研究支援プログラムを開発することである.本年度は研究期間の最終年度であり,実績は以下の通りである. 1.直接的な内部構造の観察が困難な三次元画像の解析を支援するため,多次元ディジタル画像から得られる等値面間の,並立・包含などの位相関係を木構造記述する手続き(Region-based Contour Tree)を開発した. 2.三次元画像から得られる等値面間の並立・包含関係を利用者が直感的に把握できるようにするため,1.で得られた木構造を基に,等値面の関係を矩形形状の入れ子構造で表現する手続き(Contour Nest)を開発した. 3.胎児標本三次元画像から標本の外表・内臓を抽出するために,1.で得られた木構造により記述される等値面間の位相関係に基づいて,抽出対象領域と連結しない雑音領域と,対象領域内部た生じ得る穴(空洞)領域の排除を保証する領域抽出をインタラクティブに実現する手続きを開発し,これを実現するシステムを実装した. 4.ヒト胎児の変形過程に関する教育・研究を支援する目的で,外表・内臓の標準的な変形を記述する時空間4次元モデルの構築した.モデルは3次元的な変形と共に,内臓における臓器の出現・消滅を記述可能としている.またこのモデルを用い,3.を用いて抽出されたヒト胎児標本3次元画像の各部との適切な並列表示により,標本の時空間的な個体差を示すプログラムを開発した.
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