研究概要 |
本研究の目的は,発生学において時々刻々変化する胎児の変形過程を理解するために,MR(核磁気共鳴)マイクロスコープなどを用いて胎児標本から三次元画像を抽出し,これにより取り出された胎児の外表・内臓形状を提示することによる発生学教育・研究支援プログラムを開発することである.当該研究期間における研究成果は以下の通りである。 (1)京都大学先天異常標本解析センターでは、総計4万体に及ぶ胎児標本(京都コレクション)を所蔵している.所望の標本を効率よく検索し,対応する画像データおよび付随する書誌情報を活用するプログラムとして、標本データの検索・表示システムを構築した.システムは,検索された多数の標本外表の三次元形状に対し,視線方向と表示範囲を一括して更新し,標準形状を持つ胎児モデルと比較観察する機能をもつものとした. (2)京都コレクションには連続切片の形で保存された標本が多数あり,これを効率よく三次元画像化するシステムを開発した.システムは外表写真から得られる標本存在範囲を三次元画像化に導入することを特徴とし,一連の作業を手動操作と自動処理の組み合わせにより実現するものとした. (3)三次元画像の解析を支援するため,多次元スカラ場から得られる等値面間の並立・包含関係を木構造記述する手続きに基づき,これらの関係を可視化する手続き,ディジタル画像の特性を考慮して等値面位相構造を記述する手続き,三次元画像から外表・内臓領域をインタラクティブに抽出する手続きを開発した. (4)ヒト胎児の外表・内臓に関する標準的な変形と,臓器の出現・消滅を記述する時空間四次元モデルを構築した,構築モデルにより,ヒト胎児の形態形成過程が臓器別に動画像の形で表示可能となる,またこのモデルを用い,(3)により抽出されたヒト胎児標本の外表・内臓形状をモデルと適切に並列表示するプログラムを開発した.
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