研究概要 |
平成16年度は核膜孔複合体の構造のうちで、透過型電子顕微鏡の超薄切片像において、核膜孔を塞いでいるように見えるdiaphragmと呼ばれてきた構造に着目して、その詳細を明らかにすることを目標に高分解能走査型電子顕微鏡画像の解析を行った。 1)高分解能走査型電子顕微鏡検のために、オスミウムコーター蒸着装置(HPC-30型)を用いて膜圧2nmのオスミウム蒸着を行い、直接撮影倍率x250,000の明瞭な超高分解能画像撮影に成功した(第16回国際解剖学会 京都 2004) 2)核膜孔複合体を構成している蛋白質は0.1%の希薄なオスミウム水溶液で長時間浸軟処理を行うと核膜から除去されるため、核膜だけに縁取られた核膜孔を細胞質側と、核質側の両方から観察・撮影することに成功し、その寸法(直径約45〜65nm)を測定した。 3)割断時に核周囲腔に沿って核膜が露出した試料において、積荷cargoまたは輸送担体と、積荷transport factors and cargoと考えられている構造(別名central plugまたはtransporter)は、直径約25〜30nmであった。その周囲を取り囲む核膜孔複合体の構成蛋白は16個の粒子がリング状(内径直径約10〜35nm、外径直径45〜65nm)に配列していた。核膜孔の外側で膜を隔てて核周囲腔内に位置するリング状構造(内径直径45〜65nm、外径直径90〜100nm)も16個の粒子から構成されていることが判明した。 4)以上の観察結果から、核周囲腔に位置する核膜孔複合体の構成蛋白と核膜孔内部に位置する構成蛋白は、比較的大きな8個の粒子からなる細胞質リングcytoplasmic ringとは異なり、2個ずつのダイマーが膜を介して強固な結合を保ちながらリング構造を形成していると思われた。
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