研究概要 |
上皮細胞が管状3次元構造を仕組みについて、株化上皮細胞MDCK細胞および初代培養セルトリ細胞を用い、細胞-基質間接着並びに細胞-細胞間接着に着目して解析を行った。これら2種類の接着構造が形成される仕組みを解析することが初年度の大きな目標であった。細胞-基質間接着に関しては、細胞が接着する「足場の硬さ」も重要な要因であることが明らかになった。ポリアクリルアミドゲル上で細胞を培養したところ、「足場の硬さ」が軟らかくなるに伴い、細胞-基質間接着構造とこれにつながるストレスファイバーはともに弱小化すると同時に、この接着構造におけるチロシンリン酸化量が減少していた。しかし、この接着構造を構成するintegrin α_5, integrin αv, paxillin, vinculinの種類は「足場の硬さ」を変えても変化しなかった。細胞-細胞間接着構造にはtight junction, adherens junction, desmosomeがあるが、本年度はMDCK細胞におけるadherens junctionの形成過程を重点的に調べた。その結果、隣接する細胞の接着面にE-cadherinの微細なクラスター(直径約150nm)が多数形成されることが接着の初期段階であることが明らかになった。微細クラスターの大きさはよく揃っており、これがユニットになっていることを伺わせる。微細クラスターは次第に線状に集合し、細胞の中央部から周辺に向かう形で整然と並ぶ。この整然とした配置はアクチンにより制御されていた。また、E-cadherin微細クラスターには、α-catenin, β-catenin, γ-catenin/plakoglobin, p120^<ctn>が共存することも分かった。これらの結果から、adherens junction形成過程を推測することが可能となった。
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