研究概要 |
シート状の上皮細胞から3次元の管状構造が形成されるしくみを明らかにするために、株化培養上皮細胞であるMDCK細胞および初代培養セルトリ細胞を用いて実験を行った。シート状から管状構造を形成するには2種類の接着構造、すなわち、細胞-基質間接着と細胞-細胞間接着が極めて重要な役割を果たす。そこで、これら2種類の接着構造がどのようにして形成されてくるかをMDCK細胞を用いて明らかにする実験を行った。細胞-細胞間接着構造にはtight junction, adherens junction, desmosomeの3種類が知られているが、これらのうちtight junctionおよびadherens junctionの2種類について免疫細胞化学的にその形成過程と相互依存性を調べた。その結果、adherens junctionを構成するE-cadherin, α-catenin, β-catenin, γ-catenin, p120ctnは初期段階から共存し、直径約150nmの微細クラスターを形成し、これらが多数集合することによりより大きな接着構造に成長することが明らかになった。すなわち、この微細クラスターはadherens junction形成に当たりユニットとして働いていることが強く示唆される。さらに、tight junctionを構成するタンパク質であるZO-1およびoccludinはやはり細胞接着部位に存在するものの、adherens junctionの微細クラスターと共存することはほとんどなく、早い時期から遠位の細胞接着部位に存在することが示された。一方、細胞-基質間接着構造の形成過程については、昨年度の研究から「足場の硬さ」依存性がはっきりと確認できた。以上の実験結果は2つの英文論文として投稿準備中である。これらの結果をもとに、様々な硬さの足場を用意し、その上で初代培養セルトリ細胞を培養することにより、管状3次元構造の形成条件を探ったが、残念ながら現在のところ成功していない。
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